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阿賀野型 1

軽巡洋艦 阿賀野型の考証です。
昨年末に入手しましたマイクロフィルムを電子データ化したものの中に、能代の図面がありましたので、それを紹介したいと思います。

表題には「軍艦能代 舷外側面 1/7(昭和十九年三月完成)」となっており、「第1回改正」の印が押してあります。
1/7というのは7枚組みのうちの1枚目という意味で、他に「上部平面2/7」「艦内側面及上甲板平面4/7」「中甲板下甲板及船艙甲板平面5/7」「諸要部切断7/7」があります。
残念ながら「艦橋装置3/7」「船艙及内底平面6/7」はありません。
この図面は「完成図」で横須賀海軍工廠造船部作成、製図年月日は昭和19年3月20日です。
完成図というのは、工事完了後に作成する図面で、信用性は結構あると思います。
ただ、工事中の変更すべて(特に現場で行った、ちょっとした位置変更など)が反映されているかどうかはわかりません。
また書き間違いもあったりしますが、複数の図を見比べると矛盾が出ていますので、ある程度はわかります。

一番良いのは図面と写真を見比べての検証ですが、残念ながらこの時の能代の写真は確定されたものがありません。
ただ、今回この図面を見てこの写真は能代ではないかと思っています。
00-1 能代?

この写真は、「丸スペシャルNo.5 軽巡阿賀野型・大淀 潮書房」P.4に載っているもので、漂流試験中の阿賀野と解説されています。
ですが、かなり前に「艦艇模型工廠・ヴァンガード工場」様の掲示板にて、前後に分離した飛行甲板や、煙突横の内火艇の位置から酒匂ではないかといわれていました。
しかし、酒匂にしてはおかしい点も幾つかあります。
実はこの昭和19年の能代も、飛行甲板や煙突横周辺のレイアウトが酒匂にそっくりなのです。
そこで、この写真の検証もあわせて行います。
なお、この写真を今後「19能代?写真」と表記します。
また、阿賀野型各艦の相違点について、模型誌等でもあまり書かれていない部分も言及していきます。

阿賀野型 2

阿賀野型の図面で有名なのは、「昭和造船史別冊 日本海軍艦艇図面集 原書房」にも収録されている矢矧の図面でしょう。
この本の目次にある図面出所には、舷外側面から上甲板平面までが「昭20.2.5.」その他が「昭20.1.30.」となっています。
しかし、これと同じものが戦前船舶研究会のDVD図面集の収録されていました。
こちらには表題もそのまま収録されていて、それによるとこれらは5枚組みの図面で、「1/5船外側面上部平面及諸艦橋平面」「2/5艦内側面及上甲板平面」「5/5諸要部切断」となっており、3/5と4/5が欠けています。
この2枚は中甲板以下の平面図だと思われますが、「昭和造船史別冊 日本海軍艦艇図面集」には収録されています。
そして、これらには「昭和十九年十二月二十日現在」と注釈が付けてあり、佐世保海軍工廠造船部作成の完成図です。
製図年月日は残念ながら判読不能です。
矢矧は、この後呉に回航され、更なる改装を受け最終状態になりました。
今回の能代の図面はこの矢矧の図面よりも細部まで丁寧に描かれていますので、模型製作に役立ちそうな主砲について書きます。

01-1 主砲

これは図面をベースに、いくらかを追加した図です。
写真では確認できませんでしたが、砲塔上面の4つの丸(通風筒?)は図面では全砲塔に描かれています。
また、砲塔前面の旋回手窓と照準手窓は、酒匂のみ天蓋まで伸びています。
写真は「JAPANESE CRUISERS OF THE PACIFIC WAR   NAVAL INSTITUTE PRESS」のP.604からで、酒匂の第2砲塔の後部です。
測距儀と砲塔は一体になっているようですし、測距儀の後面には2つ窪みのようなものが見えます。

阿賀野型 3

02-1 防雷具

能代の図面の、前部主砲塔付近です。
第1主砲塔と第2主砲塔の間の甲板上には、予備の防雷具が置かれています。
これは、竣工時の矢矧の写真にて確認することができます。
阿賀野と能代は4基の防雷具が搭載されていたものと思います。
矢矧は、19年末の図面では予備の防雷具は描いてありませんし、最終時の写真でも見当たりませんので、それらの時点では撤去され2基となっていたものと思われます。
酒匂は、竣工時の写真でも予備の防雷具は見当たりません。

艦橋前の3連装機銃の前にある95式機銃射撃装置改1は、この19年の能代では撤去されています。
ただし、後に書きますが機銃射撃装置は他の場所に搭載されています。
酒匂も同様にこの機銃射撃装置はありませんが、能代の場合はこの機銃射撃装置の下半分はもともと通風筒ですので、その部分のみ残されています。

この19年3月時の能代の機銃配置ですが、「世界巡洋艦物語 福井静夫著作集第8巻 光人社」の巻末にある「あ号作戦後の兵装増備の状況調査」の能代の図で増備前の配置と一致しています。
以前は飛行甲板上に増備された単装機銃の配置が奇妙に思えましたが、この能代の図面を見た後ではここにしか置けないと納得しました。
最終時の能代の機銃配置は、これを参考にすると良いと思います。

02-2 前甲板-酒匂

酒匂の単装機銃設置場所は、セルター甲板・兵員待機所上面の両方とも拡大されています。

阿賀野型 4

03-1 上部艦橋

上部艦橋です。
赤  :見張用方向盤 
青  :探照燈管制器兼防空見張
水色 :12cm高角双眼望遠鏡
緑  :二式哨信儀発受器
黄緑 :二式哨信儀全受器
橙  :全方向発哨儀
酒匂の点線は手摺で、二式哨信儀全受器は手摺の外側にあります。

阿賀野の信号所の形は丸くなっています。
戦前船舶研究会のDVD図面集の中に、阿賀野型の艦橋装置の図面があります。
表題部分の傷みが激しく艦名がわかりませんが、完成図という部分は残っていて、出図に「17 11 22」という印が押してあることを合わせると、この時点で完成していた阿賀野の図面と判断しました。

03-2 上部艦橋

上は竣工時の阿賀野で「丸スペシャルNo.5 軽巡阿賀野型・大淀 潮書房」P.3より、下は竣工時の矢矧で「日本海軍艦艇写真集 巡洋艦 ダイヤモンド社」P.179(左右反転してあります)より。
阿賀野の信号所が短いのがわかります。

追記
酒匂の平面図は「阿賀野型 29」において修正しました。

阿賀野型 5

04-1 羅針艦橋

羅針艦橋です。
橙  :九三式磁気羅針儀
水色 :12cm双眼望遠鏡(照射指揮官用)
緑  :一式発射盤一型
赤  :九七式方位盤(12cm双眼望遠鏡付)
黄緑 :天測用従羅針儀・12cm双眼望遠鏡(山川燈付)
紫  :40cm信号灯
青  :探照燈管制器兼防空見張
中央の四角は海図台、信号灯の後の丸は手旗信号台です。
ベージュ色の部分は木製グレーチングで、艦首側が高さ350mm、中央部が高さ150mmの2段になっていて、残りはリノリウム張りです。
(参考図面 戦前船舶研究会DVD図面集より 「第134・135号艦 羅針艦橋装置」) 

この部分でもっとも違いが判るのは、阿賀野の遮風装置が大型となっていることです。
その他には、九七式方位盤のある場所のブルワークの形状が、阿賀野・能代と矢矧・酒匂では違っています。
酒匂には防空指揮所を支える支柱が立っていますが、これは次回にて書きます。

04-2 垂直梯子

この羅針艦橋の後部には、測距儀塔への直立梯子があります。
写真(阿賀野「丸スペシャルNo.5 軽巡阿賀野型・大淀 潮書房」P.3より、矢矧「日本海軍艦艇写真集 巡洋艦 ダイヤモンド社」P.179より、酒匂「日本海軍艦艇写真集 巡洋艦 ダイヤモンド社」P.180より、矢矧と酒匂は左右反転)を比較しますと、これ用のフラットが能代・矢矧・酒匂にはありますが、阿賀野には無いように見えます。(青矢印)
また防空指揮所フラットには、この梯子の補強用支柱がありますが、阿賀野はここが非常に大きなものとなっています。(赤矢印)
体の向きを変えるため?のフラットがあるのかもしれませんが、詳細は分かりませんでした。

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老猿

Author:老猿
  
日本海軍艦艇を、公式図と写真から
検証しています。

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